社長秘書のクリスマス


  • 木下由加子は条件に合うレストランを探していた。

    ワインの種類が豊富で、夜景が見え、ジャズ演奏を聞きながら食事ができる。

    当然都内で、席は窓際だ。先ほどからずっと探しているがなかなか見つからない。

    「8時からです。はい…はい。大丈夫ですか?では2名で…」

    由加子はほっとして受話器を置いた。隣に座っていた杉原遥が声をかける。

    「また社長のデートの予約ですか?」

    由加子は苦笑しながら

    「ええ。しかも朝突然、今夜の予約を頼まれたのよ。金曜日でなかなか見つからなかったけど、
    ちょうどキャンセルがあったみたいで助かったわ」

    と言った。

    二人は社長秘書で、社長室に入るには二人のいる部屋を通らないといけない。電話も来客もない時は
    遥はすぐに話しかけてくる。

    社長の島谷圭吾は大学在籍中に父である先代の社長が亡くなってから、一部上場の会社を継いだ
    いわゆるジュニアである。

    中学生になるまでと大学時代をヨーロッパで過ごしているので英語はもちろん、フランス語、
    スペイン語、ドイツ語と語学堪能で経済学を専攻しており、かなり優秀なジュニアと云える。

    身長は180センチと高く、少年時代は美少年だったに違いないと思わせるような端麗な顔立ちである。

    「社長のデート相手ってどんな人なんでしょうね〜。あんなにカッコ良くて、頭も良く
    て、お金持ちなんて出来過ぎてて詐欺師じゃないかと思っちゃう。いいな〜夜景ディナー!」

    由加子はくすりと笑った。

    「あなたには素敵な彼氏がいるでしょ」

    遥は冷めた目で

    「素敵な日本語しか話せない普通のサラリーマンの彼氏ね」と言った。

    確かに・・・あの社長と週末の夜を過ごす人ってどんな人かしら。と由加子は思った。

    特定の女性がいるようではなさそうだった。会社にいろんな女性から電話がかかってくるからだ。

    由加子は何年も恋愛をしていなかった。いや、しないようにしてきた。もう恋愛で傷つきたく
    ない・・・。しかし、そんな由加子でも、たまには夜景の見えるレストランで食事といった
    デートをしたいと思う。

    ここのレストラン、うちの近くじゃない・・・。

    遥が定時で帰ったが、由加子は残りの仕事を片付けていた。時計を見ると7時半だった。

    社長から何の連絡もない。今日のお店のことを伝えようにも携帯が留守電になっていてつながら
    なかった。由加子は再び受話器を取り、社長に電話をしようとボタンを押した。

    その直後ドアが開き、島谷圭吾が現れた。

    「木下くん、よかった。まだいたか。」

    由加子は立ち上がって、お店の住所と電話番号のメモを渡そうとした。

    「島谷社長、予約とれました。8時からです。」
    「よし。じゃあ、行こう。帰り支度をしなさい。」

    由加子は「え?」と聞き返した。

    「今日約束してた友人が急遽来れなくなってね。せっかく予約したんだから、キャンセルする
    のももったいないだろ?さあ、5分後に出るよ。」
    「あ、あの、社長」

    由加子の言葉など耳に入ってない風に社長室に入ってしまった。

    社長と食事?1年経つけど、今までプライベートな付き合いなどなかったというのに、いきなり
    二人で?しかも夜景の見えるレストラン・・・。

    断ろうかと迷ったが、昼間あれだけ必死にお店を探したのは自分だ。キャンセルするのもお店の人に
    申し訳ない。。由加子はおいしいものが食べられるのだからと言い聞かせ、帰り支度を始めた。

    黒のシボレーのコルベットに乗り込み、レストランに向かう。由加子はいつになく緊張していた。
    由加子は1年前秘書になってから、職場ではプライベートな面を一切出してこなかった。

    着るものも黒かグレーのスーツ。髪は常にアップにし、化粧もナチュラルメイク。仕事中はめがねを
    かけ、とにかく忠実に仕事をこなす女性だった。色が透ける程に白く、二重の大きな目に長いまつげ。

    美人の部類に入るが、由加子は2年前に婚約者に婚約破棄されてから恋愛はもちろん人と触れ合うことも
    避けてきた。

    いざ職場以外で社長と二人になると何を話していいかわからなかった。当たり障りのない会話をし、
    到着するのを待った。


    圭吾は店に入ると店内をさっと眺め、満足したかのように頷いて言った。

    「よく見つけてくれたね。苦労しただろう」
    「仕事ですから」

    由加子はほめてもらったことを素直に喜びたかったが、仕事の時のモードがどうも捨てられない。
    しかし、席に案内されたときはさすがに顔を輝かせた。東京の夜景が見渡せる。

    「キレイ・・・」

    しばらく時を忘れて見入ってしまった。はっと気づくと圭吾が由加子顔をじっとみつめていた。

    「ごめんなさい。」

    由加子はあわててメニューを広げた。

    「君はワインを飲むかい?」

    圭吾は尚も由加子から目を離さず聞いた。

    「はい。赤でも白でも、どちらでも好きです。」

    由加子は圭吾の視線を感じながらも目線をメニューに落としながら答えた。
    食事は圭吾が適当コースを選び、ワインが注がれ、乾杯した。

    「君と食事をするのは初めてだな」
    「ええ。杉原さんと二人で、私たちはいつ誘われるのかって話してたんです。」
    「私に会いにきた客はみんな君たちと食事がしたいって必ず言うんだ。そのたびに私もまだしてない
    のに、許可するわけないだろうって言ってるよ」

    食事が運ばれ、ワインも既に二人で1本あけていた。由加子は綺麗な景色とおいしい食事とおいしいワインに
    満足していた。圭吾との会話も自然になってきた。

    最初は全く出なかった笑顔も頻繁に出すようになった。

    「驚いたな」

    圭吾は新しいワインが運ばれると、それを由加子のグラスに注ぎながら言った。

    「何がですか?」

    由加子はアルコールで頬が火照ってきているのを感じていた。

    「君が・・・君の笑顔がそんなに素敵だったなんて知らなかったな」

    由加子はどきっとした。
    圭吾に目を向けると、真っ直ぐに由加子を見つめていた。

    私ったら、何を動揺してるのかしら。社長はこういうセリフは慣れてるから平気な顔して言えるんじゃない。

    由加子はうつむいた。

    あくまでも社長と秘書じゃない・・・。
    しかも、キャンセルになったデートの穴埋めだったんだっけ・・・。

    由加子は急に浮かれていた自分が恥ずかしくなった。本当なら別の女性がここに
    座っていたはずだというのに。

    「どうした?気分でも悪い?」

    圭吾が由加子の手に手を重ねて言った。反射的に由加子は手をさっと引いた。

    「だ、大丈夫です・・・ごめんなさい。少し・・・飲みすぎたみたいで」

    圭吾はしばらくの間じっと由加子を眺めていたが、再び食事に戻った。

    食事の支払いで一通りもめた後、車に向かう途中で由加子は気がついた。

    「社長、そういえば車じゃないですか!あんなに飲んで・・・」
    「大丈夫、私は少し車で休んでから帰るから、君はタクシーで帰りなさい」

    そう言ってタクシー代を由加子に渡そうとした。

    「だめです、そんな・・・」

    由加子は迷った。ここから家までは目と鼻の先だ。でも、社長を家に入れるなんて・・・。

    かと言って、自分だけタクシーで帰って社長を車で寝かせるなんて由加子にはできなかった。

    「あの・・・社長さえよければですけど、私の家がすぐそこにあるんです。うちでコーヒーでも飲んで
    から帰られたらいかがでしょう?」

    圭吾は一瞬動きを止め、何か考えているようだったが、財布をしまい


    「・・・じゃあ、そうさせてもらおうかな」と言った。


    今のマンションに男性を入れるのは初めてであった。由加子はソファに社長を座らせ、コーヒーの準備を
    しながら心を落ち着かせようとしたが、どうもそわそわしてしまい、落ち着かない。
    圭吾は思ったより酔っているようで、目を閉じていた。

    「どうぞ」

    コーヒーを出すと、由加子はソファでなく、床にクッションを置いてその上に座った。
    圭吾はありがとうと言ってコーヒーを口にした。しばらく沈黙が続く。

    「・・・君は、その・・・付き合っている人はいるの?」

    由加子は答える必要がないと言おうかと
    思ったが、素直に「いいえ、いません」と冷静に答えた。

    「まさかと思うけど、バージンじゃないよね?」

    由加子はカッとして言った。
    「社長、それは・・・」

    「セクハラ、とでも??だめだよ、家に入れたからにはもう君と私はプライベートな関係だからね」

    圭吾はにやりと笑った。
    由加子は家に圭吾を入れたことを後悔し始めていた。早々に帰ってもらおう・・・。

    「そんなとこに座ってないで、こっちに座ったら。君の家だろ?」

    そう言ってソファに座るように促した。
    由加子は断ろうとしたが、先ほどの圭吾のセリフがひっかかり、ムキになって平気な様子を装って隣に
    座った。

    でも・・・バージンじゃないけど、もうセカンドバージンみたいなものね・・・。

    「君は、どうしてそんなに他をよせつけないようにしてるんだ?男が嫌いなの?」

    圭吾は由加子の顔を覗き込みながら言った。

    「いえ・・・そういうわけでは・・・」
    「今は敬語はやめよう。君と私は対等だ。君はどうも殻に閉じこもっているように見える。どんなつらい
    経験をしたんだ?君は強い女性を装ってるけど、実際のとこは違う。そうだろ?」

    圭吾が必死になって
    聞き出そうとしている姿が、妙にかわいく見えて、由加子は少し笑って言った。

    「たいしたことじゃなんです。昔・・・婚約者がいて、その人が別の女性を妊娠させて・・・・そのまま
    婚約破棄になったってだけで・・・社長の言う通り強くなんかないんです」

    由加子は2年前に、妊娠した女性と婚約者が二人で由加子の元に現れた時のことを思い出した。
    あんな思い・・・二度と味わいたくない。

    「父が・・・私の結婚を楽しみにしてたんですけど、破談になってすぐ亡くなってしまって・・・。
    それで余計に・・・」

    気がつくと由加子は泣いていた。
    慌てて涙をふこうと立ち上がろうとした由加子の二の腕を圭吾が掴んだ。

    「ごめん・・・軽率な質問だった・・・。泣かせるつもりなんてなかった。」

    圭吾の瞳はとても優しく、
    由加子はふだん見ることのない圭吾の目に胸が高鳴った。
    気がついた時には圭吾の唇が重なっていた。優しく優しく由加子にキスした。

    由加子はしばらく何が起こっているか把握できないでいたが、圭吾の伏せた目が開いた瞬間にはっとして体を
    離した。

    「しゃ、社長、やめてください」
    「だから言っただろう。家に入れたからにはそんなこと言わせない」

    圭吾は今度は舌を割り込ませ、激しくキスをした。


    「んっ」

    由加子は圭吾の腕を掴み体を離そうともがいたが、びくともしない。
    圭吾の舌が由加子の舌を探して蠢く。唇を甘がみする。舌先が歯をなぞる。

    「んっ・・・」

    久々のキスに由加子は目眩を感じた。いや、久しぶりだからではないかもしれない。
    圭吾のキスは情熱的だった。由加子はしだいに圭吾を受け入れていった。

    (いい匂いがする・・・)

    ちゅっ、ちゅっと音が響く。由加子の髪はほどけ、長い髪が広がった。
    真っ白な肌が上気し、ピンク色に染まった。

    圭吾の手が由加子の胸に伸びる。由加子は体を強張らせたが、圭吾が素早く察知し、髪をなでながら
    優しくキスを続けた。

    シャツのボタンがいつの間にかはずされていた。圭吾の指がブラジャーの隙間に入り込む。
    由加子の胸の先端に指が当たると、由加子はピクンと体を震わせた。

    「ふ・・・あ、んっ!」

    二人の唇が離れた。圭吾の唇が濡れている。こんなに乱れた社長見たこと
    ないわ・・。由加子は夢の中にいるような気持ちだった。

    圭吾の唇が由加子のピンク色になってぷっくりと立ち上がった乳首に向かう。
    舌先でちろちろと舐め始めると、由加子は背中を反らせて声を漏らした。

    「あっ、んっ、んっ」

    「♪♪♪♪♪♪♪♪♪」

    圭吾の携帯電話が鳴る。由加子はビクっとし、起き上がった。

    「誰だ・・・こんな時間に」

    圭吾は腹立たしげに電話に出る。

    英語だった。由加子も日常会話程度なら英語がわかるが、ビジネス用語ととてつもなく早口で
    ほとんど言ってることがわからなかったが、仕事の電話なのは間違いなさそうだった。

    電話を切ると、圭吾はため息をつき、由加子を見て言った。

    「この続きは・・・また今度だ。忘れないように。」

    ネクタイを結びなおして、上着を着ると
    立ち上がって呆然としている由加子を引き寄せて短いキスをした。

    「車は置いて、タクシーで行くから心配しないで。じゃあ、また。」

    そう言って出て行ってしまった。

    来週はクリスマスかー。

    カレンダーを見て由加子はため息をついた。

    その後圭吾はニューヨークに飛び立ってしまい、電話かメールでのやり取りだけで、要件は当然仕事の
    話だけだった。重要な取引があるようで、圭吾はいつになく慌しい様子が見て取れた。

    また今度・・・由加子はその言葉の威力がとっくに薄れているのを感じた。
    私ばかりこんなに待ち焦がれているなんて、情けないわ。。

    由加子はあれ以来圭吾に会いたくてたまらなかった。たとえ仕事の電話であっても話せるだけで嬉しかった。

    けど・・・いつまでもこんな気持ちでいるのは耐えられそうもない。
    やはり最初から近づくべき人ではなかったのだ。

    「由加子さん!一生のお願いがあるんです〜!」

    昼休みから戻ってきた遥が由加子に突然泣きついてきた。

    「どうしたの?」
    「実は、今日合コンがあるんですけど、女の子が一人来られなくなっちゃって。。
    ただでさえ女の子が少ないので、これ以上減らすわけにはいかないんです〜。
    由加子さん、今日予定あります??」

    由加子は少し戸惑った。合コン・・・正直言うと、由加子は合コンに1度しか行った
    ことがなかった。どうも雰囲気についていけない。でも、いつまでも圭吾の帰りを
    待っている自分もいやだった。

    「ないけど・・・私でいいのかしら?」

    由加子が言うと、遥は顔をぱあっと明るくし、

    「もちろん!由加子さん来てくれたら男性陣も喜びます!あ〜良かったぁ!」

    と言った。

    由加子は苦笑した。彼氏がいても合コンにここまで熱を入れている遥が無邪気に見えた。

    合コンで由加子は二人に携帯番号を聞かれた。一人は年下の大学院生、一人は有名証券
    会社のサラリーマンで、由加子の2つ年上だった。

    次の日遥に冷やかされたが、証券マンの男はその後もメールやら電話をよこし、
    かなり由加子を気に入っているようだった。

    クリスマスイブ一緒にご飯でも食べませんか。

    由加子は迷った。確かに今のところ何も予定はない。圭吾からはその後も何のアクションも
    なかった。クリスマスイブは日曜日。由加子は一人で過ごすのは嫌だと思った。

    家にいたら圭吾のことばかり考えて、結局寂しく過ごすことが容易に想像できたからだ。

    はい。ぜひご一緒させてください。

    由加子は送信ボタンを押した。




    24日。

    街は人でごった返し、カップルだらけだった。

    いたるところからクリスマスソングが流れ、ツリーやポインセチアで飾られている。
    由加子たちは横浜でディナーをした。

    由加子は圭吾のことを考えないよう必死だった。

    今頃ニューヨークで美しいブロンドの女性と過ごしているに違いないわ。。

    由加子は無理やり笑顔を作って食事をした。

    この間の食事と比べて、なんて退屈でおいしくないのかしら…

    証券マンの男はひたすら自分の自慢話ばかりしている。

    次第に由加子は家に帰りたくなった。しかし、男は食事が終わると赤レンガを散歩しましょうと言い、
    ムードのある場所に由加子を連れて行こうとした。

    由加子は仕方なく付いていき、距離をおいて歩いたが、男は徐々に距離をつめてくる。由加子
    はとうとう具合が悪いから帰りたいと切り出した。男は一瞬落ち込んだ表情を見せたが、
    すぐに嫌な笑みを浮かべではお家まで送りましょうと言った。

    マンションの近くまで来た時、由加子がありがとうございます、今日はとても楽しかった
    ですと言って早々に立ち去ろうとすると男はお部屋まで送りますと言って聞かなかった。

    一人で大丈夫です、と由加子が言うと突然強い力で由加子の腕をつかみ、今日はクリスマ
    スですよ?一人じゃ寂しいでしょう、と怒りを露わにした目で囁いた。

    「痛い!…離してください!」

    由加子は必死に腕を振り払おうともがいた。

    男が無理やりマンションに連れ込もうとした時、大きなエンジン音と共に黒のシボレーが男を
    ひきそうな勢いで止まった。

    由加子は息が止まりそうだった。

    圭吾はゆっくり車から降りると男の腕をつかんだ。

    「この女性は私の部下だ。今から大事な仕事がある。悪いが連れていくよ。」

    そう言うと、手にものすごい力を入れ由加子から男の手を離させた。

    「うわ!」

    男はよほど力強く握られたらしく、呻いて倒れこんだ。由加子は唖然として見ていたが、目の前に圭吾が
    いるのだと思うと涙が出てきそうだった。

    「社長・・・」

    圭吾は由加子をにらむと何も言わず、由加子の手を引き、車に乗せた。
    社長が怒っている。でも、どうしてここに?

    「どこに行ってたんだ」
    「え?」

    由加子が問い返すと、圭吾はハンドルを切りながら

    「あの男とどこに行ってたんだって聞いてるんだ」

    とひどく冷たい声で言った。

    「横浜です・・・」

    由加子が恐々と答えると、「なんだってわざわざ・・・」と言いながらスピードを上げて横浜へ向かった。


    横浜に着くと、圭吾は車を赤レンガ倉庫の近くに止め、外に出た。由加子もそれに続く。

    「それで・・・食事をしてここに来た。ここで何をした?キスでも?」

    由加子は慌てて

    「し、してません!」
    「じゃあ、手は?つないだ?」

    由加子は圭吾がなんでこんな質問をするのかわからなかった。

    「社長、あの・・・」
    「君は何だって今日に限って出かけたりするんだ。電話にも出ないし、家に行ったっていない。」

    由加子はポケットの中の携帯を見た。電源が切れている。

    「でも、社長はずっとニューヨークにいたじゃないですか。まさか帰ってきてたなんて・・・」
    「今朝帰ってきたんだ。てっきり君は今日私と過ごすつもりでいるんだと思ってたんだ。」

    由加子は驚いた。社長がそんな風に思ってたなんて・・・。

    「そんな・・・なにも言わなかったじゃないですか」圭吾はふいっと顔をそむけ、
    「電話で話そうにも君は要件が終わったらすぐに電話を切るじゃないか。」と言った。
    「まさか今日社長が会おうとしてくれてたなんて・・・言ってくれないとわかりません」

    圭吾は振り向いて由加子の目を見つめて言った。

    「今度っていっただろ?クリスマスはあけとくだろ、普通・・・」

    圭吾はため息をついて肩を落とした。

    由加子はその姿を見てとっさに「ごめんなさい・・・」と言った。
    圭吾はしばらく由加子を見つめて、手を延ばして由加子の手を取った。

    「いや・・・君は悪くない・・・私が勝手に君に会いたかったんだ」

    由加子は嬉しさで胸が締め付けられた。気がついたときは圭吾の腕の中に抱かれ、キスを受けていた。

    由加子はずっとこうしたかったんだと思い知らされた気がした。圭吾の冷えた唇から温かい舌が
    滑り込む。由加子は圭吾の背中に手をまわし、しっかりとしがみついた。

    「ん、ん・・・」

    由加子は幸せを感じていた。社長が今目の前にいる・・・これ以上のクリスマス
    プレゼントはない。車に戻るまで、二人は何度も立ち止まりキスをした。


    車に乗るとすぐ圭吾は埠頭に向かっ車を走らせた。

    人気のない場所に車を停めると、由加子のシートを倒し、覆い被さって由加子の唇を塞いだ。由加子は
    圭吾がこんなにも自分を求めていると感じて喜びに浸った。

    「ふ…ん…」

    圭吾の舌や唇が由加子の舌や唇を味わう。

    ちゅ…ちゅく…と静かな空間に音が冴え渡る。由加子がおずおずと舌を差し出すと、
    圭吾はすかさず舌を絡ませた。

    由加子の頭がぼーっとしてきた頃、圭吾は唇を離し、瞳を潤ませ、
    頬をピンク色に染め、唇がしっとり濡れている由加子の姿をじっと見つめた。

    「なんであんな男のためにそんな格好してくるんだ」

    と腹立たしいという風に言った。

    由加子は今日はピンクベージュの胸下切り替えのワンピースに白いコート
    を着ていた。パールのネックレスとピアスをしており、髪は下ろしてふんわりと巻き、化
    粧も少し明るめだった。いつもに比べてかなり着飾っていた。

    「これは…本当は社長との‘今度’のために…買ったんです…」

    由加子は言いながら恥ずかしくなりうつむいた。圭吾は少し微笑み、再び由加子にキスをする。
    由加子の右脇に手を伸ばし、ワンピースのファスナーをおろした。手を差し入れて、胸をやんわりと
    揉んだ。

    「・・・っ!」

    ワンピースの裾が徐々にずり上がり、由加子の白い太ももが露になった。
    由加子の胸の突起をわざと避けて、圭吾の指が円を描きながら動く。

    由加子は焦らされて体をくねらせた。

    お願い・・・触って・・・。

    圭吾のキスが徐々に激しくなってくる。圭吾の指が不意に由加子の乳首をとらえると、
    由加子の体がピクンッと跳ねた。

    「あっ・・・」


    指で弾いたり、つまんだりして由加子の反応を楽しんだ。由加子の太ももに圭吾の
    手が伸びると、さらに由加子の体が揺れた。

    内ももを圭吾の指がすべる。由加子は圭吾のじれったく動く手をつかんでしまいそうだった。

    触って欲しいところに自分で導いてしまいたい。。

    圭吾がその様子を悟ってか、ようやくストッキングの上から由加子の割れ目をゆっくりと
    なぞった。

    「あっ!」

    由加子は電気が走ったかのようにビクッと体を震わせた。しばらく誰にも
    触られていなかったそこは、極度に敏感になっていた。少しなぞられただけで、由加子の
    子宮の奥がきゅうっと縮まる。

    圭吾の指が割れ目をいったりきたりする。その度に由加子は腰を浮かせた。

    圭吾がストッキングを膝まで下げ、レースのショーツの中に手を滑り込ませた時、由加子は
    慌てて圭吾の手を掴んだ。

    「あ、あの、社長、私・・・」
    「わかってるよ。」

    圭吾は優しく答えた。そうやら圭吾は
    由加子が久しぶりの行為なのだとずっと前からわかっているようだった。

    圭吾の指はやはりじらすように、膨らみや茂みをなぞり、肝心な部分になかなか触らない。

    (もう・・・っ)

    由加子は早くさわってほしいと思えば思うほど、濡れてきているのがわかった。
    圭吾の指がいよいよ中心に滑り込んだ時には、既にとろりと垂れるほど濡れていた。

    「あんっ・・・やっ、んっ・・・」

    圭吾の指が下から上にゆっくりとクリトリスをなぞり上げた。
    先端を円を描くようにくるくると撫でる。由加子の愛液で圭吾の指は充分に濡れ、由加子の敏感な
    先端をぬる、ぬると優しくなぞった。

    「あっ、あっ、あっ、あんっ・・」

    由加子は気持ちよ過ぎて足を閉じて、圭吾の手を太ももで
    はさんでしまうが、自分ではどうしようもなかった。

    圭吾自分の膝で由加子の足を開かせ、クリトリスの包皮をむくと、ぷっくりしたピンク色の突起が
    飛び出した。更に愛液を指に塗り、先ほどよりもやさしくゆっくり撫で始めた。

    「はぅ!あん!ん!あん!」

    由加子は衝撃的な快楽に背中を反らせた。


    (すご・・い・・・なんて気持ちいいの!)

    「んっ・・・あぅっ!あっ!あっ!」

    ぬるり、ぬるり・・・。

    「は・・・ん!ん!」

    くり、くり・・・。

    「しゃ、社長・・・それ以上は・・・あん!」

    圭吾はくすりと笑って言った。

    「君はこんな時まで社長なんて呼ぶのか」

    由加子は涙目で訴えた。

    「だめです・・・もう・・・」

    圭吾は再びキスをして、由加子の言葉を塞いだ。

    (もう・・・っ、いっちゃう・・・!!)

    圭吾の指のスピードが速まり、ぬるぬるぬるぬるとクリトリスをしごき始めた。

    「んっ、んっ、んぅ、〜〜〜〜っ!!」

    由加子は最高潮の快楽が押し寄せた瞬間、がくがくがくっと体を震わせ、絶頂を迎えた。

    「はあっ、は、ぁ・・・ん・・・」

    圭吾が優しく由加子の舌を吸う。
    絶頂を迎えた由加子の頬は更にピンク色に染まり、唇は吸われすぎて赤くなっていた。
    色気が体中から噴出し、涙目の瞳は欲望に溢れている。もっと、もっとして・・・。

    「続きは私の家に行ってからだ」

    圭吾は突然起き上がると、シートベルトをし、車を出した。

    由加子も慌ててシートを戻し、下着を元に戻そうとしたが、圭吾がそれを許さなかった。
    ワンピースの裾で隠すも、ももののあたりでストッキングとショーツが止まっている。

    由加子は困っていたが、信号で車が止まるたびに、圭吾は由加子のワンピースに手を入れ刺激した。

    車通りは少なかったが、由加子は普通の顔をするので必死だった。それが余計由加子を
    興奮させ、お尻のほうまでつつ・・・と蜜液が流れた。由加子の体の中は、欲望で爆発しそうだった。

    圭吾のマンションに到着するまでに、由加子は更に1回絶頂を迎えていた。割れ目にぽってりと蜜液が
    溜まっているのがわかる。

    マンションのエレベーターで、圭吾は強く激しくキスし、由加子のお尻を揉みしだいた。
    体を密着させたため圭吾のモノも固くなっているのがわかり、由加子は喜びを感じた。

    部屋に入ると、すぐさまワンピースを脱がされ、下着だけになり、ベットに押し倒された。
    体中にキスを受けると、由加子のきれいな足をゆっくりと開き、由加子の茂みに圭吾の顔が近づく。

    「まって!それは・・・汚いです!」

    由加子は恥ずかしさで必死に手で隠した。

    圭吾は何を言っているんだと手を掴み、どかせると再び顔を埋めた。
    由加子は既にピンッとはりつめてジンジンとうずいているクリトリスを舌で刺激され、腰を浮かせた。

    「やぁ・ん!あっ!んっ!」

    由加子が自分の下半身に目を向けると、茂みの向こうにピンク色のぷっくりと
    したクリトリスが見え、それを圭吾がきれいな顔で目をふせ、したで優しく舐めている様子が見えた。
    社長が・・・あの社長が私の・・・舐めてる・・・。信じられない・・・。

    「あぅっ・・・やん、だめ、あ、また・・・」

    由加子が再び絶頂を向かえようとした瞬間、圭吾の指がぬるりと挿入された。


    「あ・あぁっっ!」

    ぴちゃ、ぴちゃっと液がほとばしる。

    だめ、もう・・・。

    由加子は体を大きく反らせた。圭吾はそのまま、由加子の中に自分の固くなったものをぬ、ぬると挿入した。

    「あん!」

    由加子はまだ自分の中がひくついているのを感じながら、圭吾のものが奥まで挿入される
    と、無意識にきゅうきゅうと締め付けた。

    圭吾は精悍な顔を苦しげに歪め由加子に出し入れした。由加子は圭吾を見上げ、圭吾を見つめた。

    今・・・社長のが・・・私の中に・・・

    由加子はしばらく喜びに浸っていたが、すぐに快楽の波にさらわれた。

    「ん!ん!んぅ!」

    ぴちゃぴちゃっと音がたつ。圭吾はもはや自分を制御できず、無我夢中で
    体を動かした。

    由加子が、足を圭吾の腰にからませると、更に圭吾のモノを締め付けた。圭吾は低く呻き、
    由加子の腰を掴むとがしっ、がしっと奥に突きつけた。

    由加子はもはや声も出ず、圭吾の体にしがみついた。圭吾が由加子の唇にキスをし、
    ぎゅうっと抱きしめると同時に由加子の中で果てた。

    二人はしばらく重なって荒い息をしていた。圭吾の髪を由加子は優しくなでながら深い幸せに包まれていた。

    クリスマスに一番ほしいプレゼントをもらったわ・・・。

    そして、しばらくして圭吾がもう一回・・・と言い出すまで、由加子は愛する人の頭をなで続けた。



    END

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